セルフサービス式でカウンターに並ぶのは、ピザ、バーガー、チップス(フライドポテト)が中心。茹で野菜は並ぶが、子どもたちは本能に忠実で、手が伸びるのは、ピザやチップスなど炭水化物中心の食品群。どうりで、英国の子どもの肥満が深刻な問題になるわけだ。
英国人の3人に1人が肥満もしくは肥満気味とまでいわれている。 photo / Kusunoki Nana
さて、ここで登場するのがジェイミー・オリバー。10年前に20代の若手シェフとしてテレビの料理番組に登場するやいなや、ルックスと若さ、そして斬新な調理法と料理が視聴者に受け、あれよあれよという間に人気者に祭り上げられ、いまやセレブになってしまった人なのだ。
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そんな彼が、給食の現状を嘆き『Jamies' school dinner(ジェイミーの給食)』という民放テレビ番組を通じ、給食革命ともいえる運動を起したのは昨年のこと。給食費が小学生1人当たり52ペンス(約110円)という予算のなかで、いかに栄養があり健康的な食事を提供するかが、最初の問題であった。しかし、そこは行動力のあるジェイミー。マスコミを扇動し、給食革命に賛同する30万人分の署名を集め、ブレア首相に直訴したのである。その結果、給食費予算の追加金を取付け、保護者や教員、視聴者からやんやの喝采を受けた。国民から「聖人ジェイミー」とまで命名され彼の革命はまい進を続けた。
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さて、次なる難関は、ジャンクフードに慣れきった子どもたちを味方につけること。ファストフードでかなり麻痺した味覚をいかに元に取り戻すか、子どもの野菜嫌いを矯正することは可能なのか……。ここでもジェイミーの"気さくなおにいさん"的な人柄が幸いした。生徒たちに野菜の名前を教えることから出発し、野菜を細かく刻む調理法を導入。「野菜ってこんなにおいしかったんだ」というセリフが子どものなかからでてくるほどにまで彼の革命は到達したのだ。万歳! ジャンクフードの給食よ、さようなら!
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1年後の今年、ジェイミーは『ジェイミーの給食・再訪』番組で給食革命のその後を追跡。結果は、野菜好きの生徒が増え喜ばしい一方、あれほど革命に協力的だった親の一部から反発が出始めたのである。「バーガーが好きなうちの子に食べさせてやりたい」と昼時に校門の柵の間からジャンクフードを我が子に差し入れする母親が英国北部で続出した。そんな行為を黙認せざるを得ない教員たち。英国では、給食は強制的に食べさせるものではない。あくまでも個人の意志が尊重されるのだ。
「給食革命」の旗手ジェイミーの次なる挑戦は? (c)Channel 4
「三つ子の魂百まで」とはよく言ったもので、ジャンクフードで育った子どもの味覚は、矯正不可能なのだろうか? いくら聖人ジェイミーのような食に情熱を持った救世主でさえ、ジャンクフードの前ではなすすべもなく打ちのめされてしまうという事実に、いま一度幼児期の食育について真剣に考え直すべきだと強く思う。せっかく食育を学ぶ機会を与えられたのに、自ら放棄する親と子どもたちの存在は、食の急進改革派である聖人にとっては、歯がゆいものであったに違いない。一歩進んで二歩下がってしまった感はあるが、彼の給食改革運動は止まってはいない。来年あたり『ジェイミーの給食・再々訪』で栄養ある食生活が再度見直されている様子を報告してくれることに、ぜひ期待したい。
●ジェイミー・オリバーのWebサイト
●『Jamies's school dinner(ジェイミーの給食)』について
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